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日本人のすがたと暮らし:明治・大正・昭和前期の「身装」

5.0
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『日本人のすがたと暮らし』は近代化における日本人のすがたと暮らしの実態を洞察した本です。

本書がとりあげたテーマは245項目にわたります。1項目は約2頁で収められているので読みやすいです。

大正ロマン、昭和レトロ、近代日本人の生態など、近代の着物ライフを知るのにもってこい。近代日本のファッション歴史を学ぶ最初に読むべき本です。

著者の大丸弘先生と高橋晴子先生は衣服の歴史をもっとも深く理解した研究者です。なぜなら、衣服の形や構造を背景となる社会情勢に結びつけているからです。単なる流行を追う研究とはわけが違います。

西洋ファッション歴史も日本ファッション歴史も世界中の研究者が本質に迫れませんでした。世界中のファッション歴史研究がダメな点は「ファッション史研究の問題:ダメな研究と良い研究の見分け方」に詳しいです。

本書の刊行計画を知ってから1年以上も待ち望みました。出版予定日の数日前に高橋晴子先生から謹呈していただき、とても嬉しかったです。

大丸弘・高橋晴子『日本人のすがたと暮らし―明治・大正・昭和前期の「身装」―』三元社、2016年

大丸弘・高橋晴子『日本人のすがたと暮らし―明治・大正・昭和前期の「身装」―』三元社、2016年

大丸弘・高橋晴子『日本人のすがたと暮らし―明治・大正・昭和前期の「身装」―』三元社、2016年

日本人のすがたと暮らし:明治・大正・昭和前期の「身装」

『日本人のすがたと暮らし』は、新聞、雑誌、広告などの同時代資料をたくさん使って、近代日本人の身装(身体と装い)の劇的な変化をとらえています。

身装、とくに「装い」という表現をとおして、身体と環境の対応の在り方を重視しています。

古代から「装い」は、決して身につける物だけを指してきたわけではありません。

本書の視野は、装いの周辺をはじめ、身体、美容、アクセサリー、素材と装い、着るひととTPO、産業と流通、メディアと環境、民族と民俗、装いから人へと、多岐に広がりながら「文化人類学の一領域としての人間論」(序文2頁)を追求します。

本書がみせる歴史の再現性

『日本人のすがたと暮らし』の課題は「文化人類学の一領域としての人間論」です。

また、歴史の再現性も課題だといえます。

歴史を述べることは過去を述べることと違って、いまとの距離が大切です。

観察者からの距離、観察者のいる時代からの距離など。近代の再現性とは当時の現実を調べたり想像したりする現実感覚によって磨かれていきます。

その点で圧巻だった一例は次の事例です。

ふつう、着物(和服)の良さとして考えられがちな《洗い張りと縫い直しで親子三代は着られる》メリットに対し、「そんなものを着せられても、娘は心が華やがない」(261頁)と、1936年の日本人女性の証言をもってきています。感服しました。

いま、インスタグラムをはじめとするSNSでは、着物インフルエンサーたちが「祖母の着物をはじめて着ました」といって登場しています。

だいたいの投稿はレンタル着物や暴利呉服屋の宣伝文句だと疑ってしまいます。もし本当に祖母のお下がりなら、まずは、イフルエンサーたちは親子三代が着られる保存方法をご教示ください♪

本書のおすすめポイント

大丸弘、高橋晴子ともに衣服の歴史を物の歴史として考えられる珍しい研究者です。

ですから逆に、物、使う人、組み合わせやTPOを混ぜて述べられます。ふつうの研究者は混ざったまま述べるので未熟です。

それに著者おふたりの現実感覚が鋭い。

「日本人の本来の姿」といった発想が同時代の流行にすぎないという指摘も目から鱗でした。同じように伝統や歴史も意外に流行、これは大切な観点です。

このようなことや冒頭にものべた乏しい研究状況からみて、『日本人のすがたと暮らし』は値段が高くても持っておきたい1冊。

また、近代日本のファッション歴史を学ぶ最初に読むべき本で、大正ロマンや昭和レトロなど、近代の着物ライフを知ることができます。

この記事は私が書いたアマゾンのカスタマーレビュー「衣服史・服装史研究史上で最も鋭いコメントの数々」の一部を使っています。

詳しい目次と著者プロフィールは「日本人のすがたと暮らし 大丸 弘(著/文) – 三元社 | 版元ドットコム」に載っています。

おすすめ本(読みごたえ重視ランキング)

日本人のすがたと暮らし

近代化における日本人のすがたと暮らしの実態をテーマ別に洞察した本です。大正ロマン、昭和レトロ、近代日本人の生態など、近代の着物ライフを知るのにもってこいです。近代日本のファッション歴史を学ぶ最初に読むべき本です。とりあげたテーマは245項目にわたります。1項目は約2頁で収められているので読みやすいです。

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